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藤田加工

光学部品の耐久性向上!アルマイト処理の効果と重要性

今回のお役立ち情報は、アルマイトです。アルマイトの簡単な説明の後、光学部品のアルマイトについてご紹介いたします。

アルマイト(陽極酸化処理とも呼ばれる)は、アルミニウムやその合金の表面に酸化アルミニウムの保護膜を生成するための電気化学的な処理です。原理は、アルミニウムを電解質(硫酸やクロム酸など)に浸漬し、電流を流すことで行われます。一般的な手順を以下にご説明いたします。

①前処理
 アルミニウム表面の洗浄と脱脂を行い、表面を清潔にする。
②陽極酸化
 アルミニウムを陽極(アノード)として電解質溶液に浸し、電圧をかける。これにより、アルミニウム表面に酸化アルミニウムの層が形成される。
③着色(オプション)
 酸化アルミニウム層は多孔質であり、染料を吸収しやすいため、染色が可能。
④封孔処理
 酸化膜の孔を塞ぎ、耐食性や耐摩耗性を向上させる。

実用例として…

①光学部品
 カメラや望遠鏡の筒部分、レンズバレル、レーザー機器の部品
②航空宇宙産業
 航空機の部品、構造材
③自動車産業
 エンジン部品、トリムパーツ
④電子機器
 ヒートシンク、ケース、筐体
⑤その他
 建築基材、調理器具、自転車フレーム、スポーツ用品

など幅広い分野で使用されています。

アルマイトの利点として…

①耐食性
 酸化アルミニウム層がアルミニウムを酸化や腐食から保護する。
②耐摩耗性
 硬度が高いため、表面の摩耗に強い。
③絶縁性
 電気的に絶縁性があるため、電子機器の部品として適している。
④装飾性
 多孔質な酸化膜に染料を吸収させることで、様々な色に染色可能。
⑤環境適合性
 無毒であり、環境に対して比較的安全。

欠点として…

①脆さ
 酸化膜は硬いが脆く、強い衝撃に対して割れやすい。
②均一性の問題
 複雑な形状の部品では、膜厚が不均一になることがある。
③処理コスト
 電解液や電力の使用、特殊な設備が必要なため、コストがかかることがある。
④処理時間
 酸化膜の厚さに依存するため、所要時間が長くなることがある。

アルマイトは、アルミニウムの特性を大幅に向上させる手段として広く利用されていますが、その選択には特定の用途や必要とされる性能に応じた考慮が必要です。

次に光学部品のアルマイトについてご説明いたします。

光学部品にアルマイトを施す目的…

①反射防止
 アルマイト処理は、表面の光反射を抑えるために利用されます。これにより、光学部品が不要な反射光を排除し、光学システムの性能を向上させます。
②耐摩耗性の向上
 光学部品はしばしば精密で高価なため、表面の耐久性を高めることが重要です。アルマイト処理によって表面硬度が向上し、摩耗や損傷に対する耐性が増します。
③耐食性の向上
 アルミニウムは腐食しやすい素材ですが、アルマイト処理により酸化膜が形成され、腐食に対する保護が提供されます。
④表面の安定性
 光学部品が使用される環境条件(湿度、温度変化など)に対して、アルマイト処理された表面は安定しており、性能が維持されます。

次に特徴は…

①多孔質構造
 アルマイト処理により形成される酸化膜は多孔質であり、この構造が光の散乱を抑える効果があります。また、この多孔質構造は染色や着色が容易で、特定の光学特性を持たせることが可能です。
②高い硬度
 酸化アルミニウムは非常に硬く、アルミニウム自体の約9倍の硬度を持っています。これにより、光学部品の表面が傷つきにくくなります。
③絶縁性
 酸化アルミニウム層は電気的に絶縁性があり、電子光学機器の部品として使用する際に短絡などの問題を防ぎます。
④耐熱性
 アルマイト処理されたアルミニウムは、高温環境下でも安定しており、光学機器が過酷な条件下でも性能を維持するのに役立ちます。
⑤表面の均一性
 精密光学部品では表面の均一性が重要です。アルマイト処理によって形成される酸化膜は比較的均一で、光学特性に影響を与える表面の不規則性を最小限に抑えます。

光学部品での実用例として…

①カメラのレンズバレル
 レンズを支える部分にアルマイト処理を施すことで、反射防止や耐摩耗性を確保。
②顕微鏡部品
 光の散乱を抑え、クリアな観察を可能にするために使用。
③望遠鏡の筒部分
 反射防止と軽量化を目的として、アルミニウムにアルマイト処理が施される。
④レーザー機器
 高精度が求められるレーザー発生装置やその周辺部品に適用される。

光学部品におけるアルマイトは、性能と耐久性を向上させるための重要な技術であり、光学システム全体の品質と信頼性を高める役割を果たしています。

光学部品に用いられるアルマイトは、主に以下の3種類が使用されます。

①硫酸アルマイト(Sulfuric Acid Anodizing)
最も一般的なアルマイト方法で酸化膜の厚さは通常5~25ミクロンです。透明な酸化膜が形成されるため、後工程での染色が可能で優れた耐食性と耐摩耗性を提供できます。
用途:光学機器の外装部品 ・カメラや望遠鏡の筒部分 ・レンズバレル
②硬質アルマイト(Hard Anodizing)
高電圧・低温条件で行われるため、酸化膜の厚さが50~150ミクロンと非常に厚い。酸化膜の硬度が高く、耐摩耗性に優れている。より暗い色の膜を形成することが多く(黒、濃い灰色など)、耐食性が高い。 用途: 高耐久性が求められる光学機器の内部部品・精密機器の可動部品・レーザー機器の部品
③クロム酸アルマイト(Chromic Acid Anodizing)
酸化膜の厚さは2.5~7.5ミクロンと非常に薄く、柔軟性があり、ひび割れにくい。溶接前後の処理に適している。優れた耐食性を持ち、後の加工(塗装や接着)に良好な接着性を持っています。 用途:軽量化が求められる光学機器の部品・耐食性が重要な部分 ・航空機の光学部品

光学部品のアルマイトは、それぞれの用途に応じて最適な方法を選択することが重要です。適切なアルマイト処理を施すことで、光学機器の性能と耐久性を向上させ、信頼性の高い製品を提供することができます。

光学アルマイトの下地処理(梨地処理)について、主なものを以下に説明いたします。

化学研磨 (Chemical Polishing)
化学研磨は、化学薬品を使用して表面の微細な凹凸を除去し、滑らかな表面を得る処理です。表面を平滑化するために使用されます。
①処理対象
 対象となる材料に適した酸やアルカリなどの化学溶液を選びます。
②浸漬処理
 部品を化学溶液に浸漬し、特定の温度と時間で処理します。溶液が表面の凸部を優先的に溶解することで平滑化が進みます。
洗浄:処理後、部品を水や中和剤で洗浄し、残留薬品を除去します。
特徴:表面の微細な凹凸を効果的に除去し、光学特性の向上(反射率や透過率の均一化)が期待できます。
用途:レンズやミラーの表面平滑化、高精度な光学機器部品の仕上げに用います。

化学梨地 (Chemical Etching)
化学梨地は、化学薬品を使用して表面を腐食させ、粗い梨地状の仕上げを得る処理です。これにより光の拡散反射を促進します。
①処理対象
 材料に適した酸やアルカリなどの化学溶液を選びます。
②浸漬処理
 部品を化学溶液に浸漬し、特定の温度と時間で処理します。溶液が表面を不均一に溶解することで梨地状の表面が形成されます。

洗浄:処理後、部品を水や中和剤で洗浄し、残留薬品を除去します。
特徴:表面に微細な凹凸ができ、光の拡散反射を促進し、特定の反射防止特性が得られます。
用途:光学レンズやフィルターの反射防止処理、装飾的な仕上げや機能的表面処理。

ブラスト処理 (Blasting)
ブラスト処理は、高速で投射される微粒子(砂やガラスビーズなど)を使用して表面を機械的に研磨する方法です。
①粒子の選定
 使用する粒子(例えば、アルミナ、ガラスビーズ、シリカなど)の材質と粒度を選びます。

処理方法:エアブラスト(乾式)やウェットブラスト(湿式)などの装置を使用します。
投射:高速で粒子を表面に投射し、表面を機械的に削り取ります。処理時間や粒子の種類、投射角度を調整することで、目的の仕上がりを得ます。
特徴:表面の均一な粗さ、表面クリーニングと同時に粗さ調整が可能です。

■ まとめ

化学研磨、化学梨地、ブラスト処理の各手法は、それぞれ異なる特徴と用途を持ちます。化学研磨は平滑で高精度な表面仕上げに、化学梨地は反射防止と光の拡散に、ブラスト処理は表面の均一な粗さとクリーニングに特化しています。光学部品の製造において、これらの処理方法を適切に選択し組み合わせることで、製品の性能と品質を最適化することが可能です。

■ 藤田化工(株)の光学アルマイト

1.艶あり(梨地処理なし)
製品の外観を重視する場合に適しています。この処理は、素材を生かした光沢感を出すことができます。また、梨地処理が必要ないため、コストを抑えることができます。表面に凹凸を形成しないため、色ムラが少なく、汚れや付着物が付きにくいという利点もあります。

2.艶消し/化学梨地
光沢を抑えることで製品に重厚感や高級感を与えることができます。ブラスト処理と比較して、この技術は表面の凹凸や変形を嫌う製品に適しています。表面の凹凸が滑らかで均一な処理が行われるので、色ムラが少ないという利点があります。化学的反応によって表面を処理するため、ブラスト処理よりも繊細な表面処理が可能です。

3.艶消し/化学梨地+化学研磨
化学研磨は、表面を均一な粗さに仕上げるための加工技術の1つで、化学梨地の後工程として行われます。化学研磨によって表面の凹凸を平滑化し、光沢感を出すことができます。化学研磨を行うことで、表面の粗さが均一になり高級感あふれる仕上がりです。また、傷が目立ちにくいというメリットがあります。

4.艶消しアルマイト/ブラスト処理
ブラスト処理は、表面に小さな粒子を打ち付けることで、表面に凹凸を付け、光沢を抑えることができる表面加工技術の1つで、乱反射を抑え迷光の防止に適しています。特に、カメラの筐体やセンサーのカバーなどによく用いられます。化学梨地よりも光沢を抑えたマットな仕上がりになります。

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